
損益分岐点とは、売上とすべての費用がちょうど等しくなり、損益がゼロ(プラスマイナスゼロ)になる点のことです。せどり・eBay輸出では、商品1点について「いくらで売れば赤字にならないか」という最低販売価格、あるいは「いくらまでなら仕入れてよいか」という仕入れ上限額を指して使われます。
損益分岐点(Break-even Point)の計算方法
商品1点の損益分岐点となる販売価格は、「仕入れ値+販売手数料+送料+その他経費」の合計です。この金額を上回って売れれば黒字、下回れば赤字になります。eBay輸出では手数料の種類が多く、為替の影響も受けるため、損益分岐点を正確に出すには利益計算の項目を漏れなく押さえる必要があります。
手数料が販売価格の割合で決まる場合
Final Value Feeのように、手数料が販売価格に対する割合で決まる場合は、単純な足し算では分岐点を出せません。販売価格を上げると手数料も増えるためです。この場合は次の式を使います。
損益分岐となる販売価格 = (仕入れ値 + 送料実費 + その他の定額の経費) ÷ (1 − 手数料率の合計)
計算を分かりやすくするための数字で、仕入れ値5,000円・送料実費2,000円、販売価格にかかる手数料率を合計20%と仮定します。
- 誤りやすい計算: 7,000円に「7,000円 × 20% = 1,400円」を足して8,400円とする
- 正しい計算: 7,000円 ÷ (1 − 0.2) = 8,750円
8,400円で売ると、手数料は8,400円 × 20% = 1,680円になり、手元に残るのは6,720円です。仕入れ値と送料の7,000円に届かず、280円の赤字になります。手数料率は実際に扱うカテゴリや販売先で変わるため、自分の数字に置き換えて計算してください。
仕入れ上限から逆に考える
想定販売価格が先に決まっている場合は、そこから手数料・送料・経費を引いた金額が仕入れ値の上限になります。上と同じ前提で、10,000円で売れる見込みの商品なら次のとおりです。
- 利益ゼロの仕入れ上限: 10,000円 × (1 − 0.2) − 2,000円 = 6,000円
- 1,500円の利益を残したい場合: 6,000円 − 1,500円 = 4,500円
仕入れの場で使うのは、利益を残した側の数字です。分岐点ぎりぎりの上限で仕入れると、少しの値下げや送料の上振れで赤字になります。
打ち手を効く順に並べる考え方は、3つの商材の例つきで売価と仕入れのどちらを動かすと効くかにまとめました。
為替を含めた損益分岐レート
eBay輸出では、売上は外貨、仕入れと送料の多くは円で発生します。そのため、「1ドル何円までなら赤字にならないか」という為替の損益分岐点も出せます。
計算を分かりやすくするための数字で、$80で売れ、手数料率の合計を20%と仮定します。手数料を引いた手取りは$80 × (1 − 0.2) = $64です。仕入れ値と送料の合計が7,000円なら、次のようになります。
- 損益分岐レート: 7,000円 ÷ $64 = 約109.4円/ドル
これより円高になると、ドル建ての価格が同じでも赤字になります。実際には円に替えるときの通貨換算のコストも差し引かれるため、分岐レートはこの計算よりも円安側に寄ります。
この考え方を為替に当てはめた「何円まで耐えられるか」の出し方は、損益分岐レートの作り方で解説しています。
月単位の損益分岐点
商品1点の分岐点とは別に、月単位の分岐点もあります。ツールの利用料やストアの月額など、売れた件数にかかわらず毎月出ていく固定費を、1件あたりの利益で回収できるかを見ます。
月の損益分岐件数 = 月の固定費 ÷ 1件あたりの利益
計算を分かりやすくするための数字で見ると、固定費が月15,000円で1件あたりの利益が1,500円なら、15,000円 ÷ 1,500円 = 10件です。10件を下回る月は、1件ずつは黒字でも月全体では赤字になります。
副業として続けるかを利益と時間で判断する考え方は、eBay副業の伸ばし方で段階ごとに整理しています。事業側の手残りと家計側の分岐点の比べ方は、独立の判断に使う、生活の損益分岐点で扱っています。
損益分岐点をせどりで使う場面
- 仕入れ判断: 相場の販売価格から逆算した仕入れ上限額を守ることで、「売れたのに赤字」を仕入れの時点で防ぎます
- 値下げの下限設定: 価格改定で値下げしていく際、損益分岐点を下限として意識すれば、無自覚な赤字販売を避けられます
- 損切りの判断: あえて損益分岐点を下回って売る損切りでは、「いくらの損失を確定させるのか」を損益分岐点との差額で把握できます
- ROIとの使い分け: ROIは投じた資金に対してどれだけ利益が出たかを見る指標で、損益分岐点は赤字と黒字の境目を見る指標です。仕入れ判断では、分岐点で「赤字にならないか」を確かめたうえで、ROIで「資金効率が十分か」を比べます
下限からの距離を先に持っておくと値引きの判断が速くなることは、下げてよい条件を先に決めるで扱っています。
前提が変わったら計算し直す
損益分岐点ぎりぎりの販売は、利益がゼロでも作業時間はかかっているため、実質的には赤字に近い取引です。また、送料の実費や為替レートの変動で分岐点自体が動くことがあります。計算に使った前提(手数料率・送料・レート)を記録しておき、次のような変化があったら分岐点も計算し直してください。
- 手数料の料率や、販売先の国・サイトが変わったとき
- 発送方法や送料の実費が変わったとき
- 為替が大きく動いたとき
- ツールやストアなど、毎月の固定費が増えたとき
損益分岐点は、商品ごとの費用データが揃っていて初めて正確に計算できます。手数料・送料・仕入れ値を取引ごとに記録する管理体制が、赤字を未然に防ぐ土台になります。
生活費と事業の資金が混ざると分岐点が出せなくなることは、生活費と仕入れの財布を分けるで扱っています。
執筆・監修: Trade Force 運営チーム